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人の気持ちが分からなければデータから推論すれば良い

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少々極端なタイトルかもしれません。これは、僕自身のことであり、共感する誰か(あなたはどうですか?)のことでもあります。


僕は他人の気持ちを汲み取るのが苦手だと自覚しています。これはあくまで、「この世の中には他人の気持ちを汲み取ることができる人がいる」という仮定のもとでの話です。だから「そもそも他人の気持ちを汲み取ることなんて誰にもできないでしょ」と考える人にとってはわけの分からない話かもしれません。とりあえず話は続けます。他人の気持ちを汲み取るのは苦手ですが、自分自身の感情は割と彩豊かにとらえることができ、小説や映像作品にみられる情景描写なども味わうことができます。でも、他人の気持ちは汲み取れません。面白いほど汲み取れず、それが原因でしょっちゅう他人とけんかをします。


前職のときにはそれがかなり問題になりました。職場の皆さんはとてもよく働くし、気が利くし、僕もそのなかでのびのびと働かせてもらっていました。それで楽しい気持ちになっていると、実はその隣で僕の言動に悲しい思いをしている人がいたり、僕に無理強いされていると感じている人がいたりしたことをあとで知ります。これは一度ではなく何度もあり、そのたびに僕は、自分の感情と周囲の感情とのズレだけでなく、「どうして周りのみんなの感情の移ろいに気づけないんだろう」と悩みました。この話はこのまま続きます。いまもあまり変わっていません。変わったのはむしろ周囲のほうで、「こいつはそういう奴だ」と割り切って接してくれるようになり、僕はそれに救われて生きてきました。


変わっていないと言いつつ、「変わったこと」についてお話しします。いまも相変わらず、他人の気持ちはこれっぽっちも分かりませんが、「統計的におそらくこの気持ちなんじゃないか?」と推論できるようにはなりました。これも前職の上司から教わって練習してきたことなのですが、僕は膨大な失敗を、失敗として終わらせないようにせめて蓄積だけはしようと決めて生きてきました。だから、例えば友人が僕の目の前でコップを割ったとして、僕はそのときに、「そういえばこのまえ●●さんがコップを割ったときは、そのコップが●●さんのお気に入りのコップだったからすごく悲しんでいたな」とか「◆◆さんはむしろ聴覚過敏だから悲しいというよりは驚いて怯えていたな」などと過去を参照します。そうして、目の前の友人の情報と照合し、「90%の確率で驚いていて、50%の確率で怯えていて、30%の確率で悲しんでいるだろう」と推測します。改めて文字にすると少し冷たい感じがしますが、僕は普段、こうやって「他人の気持ちを汲み取る」という行動を代替的に実現しています。


もちろん、あくまで自分が知る限りのデータに基づいた推論なので、まったくその通りであることは少ないです。ですが、これをすることによって以前よりも周りの人から「スジは微妙だけど、頑張って汲み取ろうとしているし、時によってはいい感じ」と思ってもらえることが増えました。人の気持ちが分からなくても、データからの推論でなんとかなっています。そしてこのやりかたは理論上、生きれば生きるほど、いろいろな人のいろいろな気持ちに出会えば出会うほど精度が向上していきます。だから、(安易ですが)生き続けることが前よりも楽しく感じるようになりました。


もし、他人の気持ちが分からないことで悩んでいる人がいたら、ぜひ試してみてください。周りに悩んでいる人がいたら、アドバイスとして紹介してみてください。