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断つ

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僕も歳をとった。27歳。あと数ヶ月で28歳。5年くらい前までは「うわー、93年生まれ?え?平成?ヘイセイ?え、やばー」と言われる側だったのに、今はもう自分が「え、2000年生まれの人が成人!」なんて言う側になっている。「お買い物!お買い物!西武冬市!」というCMが7歳の記憶、白色のクマみたいなキャラクターがミレニアムと連呼していた、たしか。


だから、だからというのは歳をとったから、最近僕も自分より若い人たちに「世代差」なるものを感じることが増えている。若いなあとか。くすぐったいなあとか。今までは僕がその対象だっただろうし、思い返せば世間様の冷ややかな目線、恥部を見てしまったような反応はまぎれもなく僕に向けられていた。それが少しずつ僕では無くなり(まだ向けられることはある)、自分とは決定的に違う世代としての〈若者〉たちが誕生している。


それで、自分に向けられていた目線や反応を思い出すと気分が悪くなる。向けられていたこと自体はどうでもよいが、僕に対する僕より上の世代の人たちの言動と同じように僕がシニカルに下の世代を捉えていることが胸糞。偉くなったな、われ。いつからそんな冷ややかな態度を他人に示せるようになったんだ、と。人は自分がやられたことを他人に繰り返してしまうという話があるけれど、これはまさにその典型例。叩かれて育ったら叩いて育てる、「かわいがり」を受けてきたから「かわいがり」をする。被害者の延長線上で、僕は加害者になった。


たまに出会うのが、こういうのじゃない大人。加害と被害の連鎖を自分のところで食い止められる人。自分がされてきたことを他人にしない人。僕はそういう人を見るたびにゾッとする。理解し切れない。自分がされて抱えたモヤモヤはどうしたらいいの、どうしているの。


前職で信頼できる〈こういうのじゃない大人〉に出会ったときに聞いてみたことがある。ストレートに、あなたのモヤモヤはどこへ?と。だいぶ失礼な聞き方だろうが、そんなの気にしない様子のその人は笑顔で返事。「どこへ?うーん、少なくともしてきた人に返さなかったら他の人には引き継がないかな」とのこと。なるほど、してきた相手に仕返すことはあるらしい。そして、他の人に仕返しの代役を押し付けることはしないというのも納得。そりゃそうだ、そうじゃないとおかしな話だ。聞いて分かったのは、僕は自分のこれまでの被害者としての蓄積にフォーカスして、その清算をどうするかという次元で事態を捉えている、ということ。そして僕が質問した相手は、出来事をその当事者に収束させていて、他人を巻き込んで転移させたりしないということ。自分が新たな加害者となることに充分な注意を払っていた。


僕も連鎖のつなぎ目に立つときが来た。大袈裟か。いや、でも、食い止めたい連鎖が沢山ある。きっとすでに繋いでしまった連鎖もある。子供の頃に理不尽な大人の態度に涙を飲んだ。あの苦い気持ちを思い出して、僕に出来る限りで連鎖を断ち切りたい。