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自分のことを語ってください

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僕が日々スタッフとコミュニケーションをとるうえで大事にしていることは,スタッフが自分自身でいられるかどうかということです。例えば,僕に何か相談をしてきたスタッフがいた場合,僕が気にするのは相談の内容よりも「その話,あなた自身で話せていますか?」ということです。

Xさん:「AさんがBさんのことをあまり良く思っていないみたいで…」

僕:「そうなんですね,それで?」

Xさん:「だから何かしらの手を打ってAさんとBさんが良い関係を築けるようにしたほうがいいと思うんですよね」

僕:「なるほど。Xさんがそう思っているのですか?」

Xさん:「え?まぁそうですけど,私が思うとか関係なくそのほうが良くないですか?」

僕:「それは僕にはわかりません。それが良いか悪いかは今の僕にはわかりません」

Xさん:「はぁ…」

僕:「それで,Xさんはなんでそう思うんですか,AさんとBさんが何でしたっけ」

Xさん:「AさんとBさんが良い関係を築いたほうがいい,です」

僕:「そうです,それです」

Xさん:「だって,そのほうが周りも気を遣わないし,二人も気持ちよく働けると思うんです」

僕:「そうなんですね。じゃあ,Xさんは周りが気を遣わないほうがいいと思っているんですね」

Xさん:「そうです」

僕:「しかも,AさんとBさんが気持ちよく働けたほうがいいと思っている」

Xさん:「はい」

僕:「それはどうしてですか?」

Xさん:「「それはどうしてですか?」というと?」

僕:「気を遣わないほうがいいというのと,気持ちよく働けたほうがいいというのは,どうしてなのかと思って」

Xさん:「それは…」

とまあ,このような感じです。こうやって見てみると,なかなか粘着質なコミュニケーションですね。でも,ここをしつこくこだわって聞いていくことで,何にも後ろ盾のない自分自身の言葉に研ぎ澄ますことがとても大事だと感じています。

なぜか。至極単純な話ですが,自分自身の言葉であれば,ある程度責任を持って運用できるからです。逆に言えば,「一般的にそうでしょ 」とか「会社の方針がそうでしょ」とか「〇〇さんが言っていた」という言葉が権威を保持したままになってしまうと,簡単にそこに逃げることができてしまいます。そして,仮にそうやって逃げるようなことがあれば,それは逃げた本人を責めても仕方なく,逃げられる環境を許容してしまったことが問題になります(これが分かっていると,むしろ逃げ道を確保しておいたほうがいいときなどはその調整ができます)。

逃げることは悪いことではありませんが,適切に運用できていない「逃げる」コマンドは,人の成長を阻害してしまいます。だから僕は,小さなことでも「あなたがそう考えていますか?」「あなたも心からそう思っていますか?」と必ずその人自身の考えや思いであるかどうかを確認します。

僕とのコミュニケーションが多くなってくると,最初から自分のことを語ってくれるようになります。そうなると話は早いです。お互いの熱量も凄まじいものになります。