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相手がそう思うはずって僕が思ってる。

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相手がそう思うはずって僕が思ってる。

僕は友達と一緒に食事をしていた。お互いの近況報告に始まり、過去の思い出話をしたり、恋愛話をしてみたり。美味しいご飯を食べながらの楽しい話、時間はあっという間に過ぎていった。気づけば22時、僕は明日も仕事で相手は確か休みと言っていた気がする。明日も早いからそろそろ、と一応言っておいた。そうだよね、と友人。でも、なかなか話題は尽きずにどんどんと時間が過ぎていく。正直、途中から友人の話よりも掛け時計のほうが気になり、なんの話をしていたか覚えていない。さっきわざわざパスも出してるのに、なんで分からないんだろう。普通、次の日仕事で早い人が「そろそろ…」って言ったら会計して解散するでしょうよ。


相手がそう思うはずって僕が思ってる。


職場で新規プロジェクトが立ち上がり、3人でチームを組んで取り組むことになった。シフト制の職場なので3人が会える日は限られている。進捗を確認したり、困難な状況をシェアしたりするには工夫が必要だ。そこで、3人で共同編集する管理ツールを考案した。チームメイトもツールの使用を快く受け入れてくれ、順調に歯車が回り始めたと思った。しかし、時間が経つにつれて2人のツールの管理が疎かになり、ツールを管理すること自体が負荷に感じられると言われるようになった。いや、気持ちは分かるけど仕事だよ?普通、直接会うのが難しい状況だったら情報を集約できるツールの更新は優先順位あげるでしょうよ。


相手がそう思うはずって僕が思ってる。


仕事場からの帰り道、電車に乗る。最寄駅に着いて改札へ向かう。財布を取り出して、改札を通過しようとしたら、反対側から同じ改札を目指していた人が小走りして先に通過してきた。結果、僕は通行止めをくらい、数秒のあいだ改札が開くのを待った。仕事終わりで疲れていたこともあり、その数秒が物凄く鬱陶しかった。普通、相手の方が先に着きそうだと思ったら、後に着く方が譲るでしょうよ。


相手がそう思うはずって僕が思ってる。


だからといって相手がそう思っているとは限らない。「普通…」とつければ万人がその考えを支持していることになるというわけではない。ものすごく支持者の多い意見が、目の前の人にも支持されているとは限らない。「相手がそう思っているのだ」ということは、そう思っている僕の頭の中にしか存在していない。だから、僕がそう思うことで存在しているのであって、裏切られた気持ちになっても、それは誰に裏切られているのだろうか。相手?違う…僕だ。


相手がそう思うはずって僕が思ってる。


そう思い続ける限り、僕は裏切られ続ける、僕に。普通そうじゃないでしょう、どう考えたってこうでしょう、僕だったらこうするのに、そう思った時点で、問題は自分の中に生じている。