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自己犠牲の彼岸

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先日、職場のスタッフに「自分のやりたいことや楽しいことと、会社の業績とがマッチしているところを考えたい」という相談をされました。 一般的な企業にお勤めの方々であれば、まあ受けうる相談だよねとなるかもしれません。でも、障害福祉の分野ではなかなか珍しいのです。

まず、「自分のやりたいことや楽しいこと」を表立って相談に出してくるような方がそんなに多くありません。持っていないわけではなく、むしろこの業界や仕事にかける思いは物凄く強い方が多いです。でも、出し方がわからなかったり、出していいのか不安になるのです。自己犠牲を中心に据えている人たちが多いことも関係しているのでしょうか。自分本位のwantやwillを語ることの心理的ハードルがとても高いようです。

次に、「会社の業績」を正の方向で意識するような捉え方をする方も多いか少ないかで言われたら少ないほうです。そもそも「会社の業績」なんて考えたくない、悪だ!という人は一定います(でもこういった方は社会で言われているほど多くはありません)。あとは、会社が業績をあげることを肯定的に捉える思考的枠組みが習得できていないから正にも負にも意識しないという人が多い印象です(これは日本の、資産(お金など)に関する教育が未発達なことが原因だと確信しています)。増して、業界特有の自己犠牲が増し増しになると、「それよか相手(サービス提供先)が幸せかどうかだけ考えておこう」のようになります。

だから、自分の職場のスタッフ(管下スタッフ)に先の相談をされたとき、とても嬉しく思いました。僕は、自分を幸せにできない人は他人のことを幸せにできないと思っています。学習と般化の観点で考えれば、幸せに対しての学習をまず自分でおこなわないことには、他者に向けて般化するようなことは難しいだろうと思うからです。

過去に、「Win-Winの関係を作るには、まずは自分が一度Winを経験する必要がある」という話を聞いたことがあります。その人曰く、「Lose-Loseの関係からWin-Winの関係になるにはどのような過程をたどると良いでしょうか」という質問を教育や福祉の人にすると、「Lose(自分)-Lose(相手)からLose(自分)-Win(相手)を経てWin(自分)-Win(相手)になるようにする」という回答が多く返ってくるそうです。でも、この流れだと自分がWinのイメージを持てずに移行が長期化してグズグズになることが多いそうです。

自己犠牲の彼岸。あいだにはまだまだ太く果てしない川が横たわっています。それでもあきらめずにたどり着こうと行動し続けることが、今回のスタッフの相談のような事象を生むのだと自信につながりました。